卒乳?断乳?おっぱいの止め時って?

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生まれてすぐの赤ちゃん
以前、おっぱいを止める事は一般に「断乳」と言われていて、母子手帳にも1歳のページに「断乳はすみましたか?」と記載されていました。これが十数年前から、「卒乳」という言葉に置き換わっています。母親主導でおっぱいを「止めさせる」のではなく、子どもが欲しがらなくなり自分から「卒業」するのを待つのが良いとする考え方なのですが、「断」「卒」の字面や響きから、後者の方が優しい印象が持たれ、定着したと考えられます。
しかし、この「子どもが欲しがらなくなる」をはき違えると、「子どもが欲しがっている間は止められない」になってしまい、無為に長期の授乳と母乳トラブルを抱えるお母さんを沢山見るようになりました。

おっぱいは、子どもに栄養・水分を与える「食事」が本来の機能です。しかし実際は、子どもの不機嫌をなだめる為に使われることも多いのが実情ではないでしょうか。生まれてすぐの赤ちゃんは口に快感が集まっていて、おっぱいをしゃぶる行為は単なる食事ではなく、母親の存在を確かめる安心・癒やし・口触りと甘さを楽しむ娯楽でもあります。少し大きくなると、暇つぶし・母親を独り占めする戦略としても機能します。特に、眠りにつくときには効果絶大です。絶対的な信頼と愛情を持つ母親の腕に抱かれて乳首をしゃぶる行為は、赤ちゃんに何よりの安心感をもたらし、簡単に寝付くことが出来ます。母親から見れば、グズグズ言う子どもを一発で寝かしつけ出来るおっぱいは何よりの育児ツールです。けれども、それに頼っているといつまでも「卒乳」に至りません。

1歳数ヶ月の、例えば唐揚げを幾つでも平らげる様な子どもを持つお母さんから、「いつになったら卒乳できますか?」と聞かれると、私は「卒乳ならもうすんでいますよ」と答えます。固形食によって充分に栄養摂取し、お水やお茶をグビグビ飲み、日中は転んでもおっぱいを欲しがるわけではない、だけど寝るときにはおっぱい、そんな子が多くなっています。その場合、おっぱいは「食事」としての機能を完遂しています。残っているのは、母子双方の「これがなければ眠れない」という思い込みだけです。無くても眠れます。

寝かしつけにおっぱいを使っていると、それを子どもの側から手放すことは殆どありません。お母さんが嫌だと思ったときに泣かせてでも止めるほかは無いのです。例えば3歳になって日中は「僕はお兄ちゃんだからおっぱいなんか要らない」と豪語する子どもでも、寝とぼければ泣いて欲しがるのが子どもというものです。

勿論、お母さんが授乳を楽しんで何のリスクも負っていなければ何年だろうと続けて構いません。ですが、おっぱいは子どもに母乳を与えるために機能しています。子どもが眠たい・空腹で無いなどして「母乳は飲みたくないが吸い付きたい」時、母乳を飲み残したり、飲まずにすむような吸い付き方で乳首を傷つけたりします。つまり、「食事」以外の授乳は乳首の痛み・乳腺炎などの母乳トラブルに直結するので、2-3ヶ月以降は止めたいものです。止め方については、「夜間断乳の勧め」の項をご参照下さい。

逆に、早すぎる卒乳というのもお母さんには不安なものです。10ヶ月頃に急におっぱいを欲しがらなくなり、お母さんが誘っても申し訳程度に吸い付くだけでちゃんと飲んでいる素振りが無い様な子も少なくありません。大抵はご飯が好きでよく食べ、動きも活発で発育も良い子ども達です。ただ、このあたりの月齢は体重の増加があまりない時期なので、母乳無しでは栄養が足りなくなるのではと断乳を思い切れないお母さんが多いようです。しかし、子どもの本能的なカロリーコントロールはとても厳密なものなので、欲しがらないならあげなくて構いません。子どもの食事全般に言えることですが、子どもには、食べさせてやっているのであって、食べて頂く必要は無いのです。ただし、何かしらの病気や障害をお持ちのお子さんであれば話は別ですから、主治医に相談しましょう。

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