2019/12/13
授乳によって、乳首の皮膚がひび割れてひどく痛むことがあります。
赤ちゃんの口の中で、乳首は長く引き伸ばされて吸われているので、皮膚が固かったり脆かったりして伸びにくいと亀裂(ひび割れ)を起こします。
アトピー性皮膚炎がある方など、元々の乳首のコンディションによっては防ぎきれない場合もあるのですが、多くは赤ちゃんが乳首の正しい位置より浅く吸っているのが原因です。
この対処については「乳首が痛い~産まれてすぐの赤ちゃん」の記事をご参照ください。
亀裂を防ぐ、またはひどくしないためには、乳首の保湿が効果的です。
傷のできはじめ、それほどひどくないとき、一番手軽に手に入る保湿剤は、「母乳」です。母乳には脂肪やタンパク質が含まれているので、乾くとカバー力を発揮します。抗菌作用があるので、化膿も防ぎます。授乳後、搾った母乳を傷につけ、息で吹いて乾かし、またつけてを数回繰り返すと痛みが和らぎます。
傷が深いとき、私がお勧めしているのは、「ラノリン」という、羊のオイルを塗る方法です。羊の毛を刈り取って遠心分離機にかけると、油が取れます。オーストラリアなど、羊毛の産地ではラノリンがハンドクリームなどの化粧品として売られています。これを、さらに精製してラノリン100%にしたものが、授乳ケア用品になっています。融点(溶ける温度)が高いので、軟膏状に固まっていて、乳首に塗ると溶けて流れることなく、皮膚をぴったりカバーして長時間保湿し、傷を埋めて痛みを減らしてくれます。ラノリンは人間の皮脂に成分が近く、アレルギーを起こしにくいことが分かっています。食べても害が無いので、塗ったまま拭き取らずに授乳できます。使うのはほんの少しずつで十分効果的です。
日本で手に入るのは以下のふたつです。普通のドラッグストアには無いことが多いので、通販で手にいれるか、産婦人科の売店で探してみてください。
ランシノー(カネソン本舗)
ピュアレーン(メデラ)
乳首にオイルや軟膏を塗った上を食品用ラップで覆っている方をよく見かけます。一時的であれば傷の保護に役立ちますが、ずっと貼りっぱなしにするのは皮膚のカンジダ(カビ)感染の恐れがあるのでお勧めできません。メリヤスの端布(古いTシャツを小さくカットするなど)などの通気性のあるもので覆うか、キッチンペーパーなどで乳輪の大きさの円座を作ってブラジャーに入れると傷の擦れを防げます。
すでに深い亀裂がある場合、吸わせていないときに傷が治りかけ、授乳でまた切れてを繰り返すといつまでも治りません。痛いのは承知ですが、授乳直後に乳首を引っ張るようにして軟膏やラノリンを傷に埋め込むように塗ってみてください。つまり、傷が開いた状態で治すのです。この方が、痛みは早く無くなります。