2019/12/13
順調に母乳育児をしていたのに、急に乳首にひどい痛みが出たり、おっぱいが詰まってしこりになることが、2ヶ月半を過ぎた頃からよくあります。多くは母乳分泌が良好でまたは混合授乳で、赤ちゃんは産まれたときの2倍ほどに大きくなっており、母乳ミルク合わせて1日7回以上の授乳をしています。
この場合、原因は授乳のし過ぎです。
産まれてすぐの赤ちゃんは、食欲中枢が未発達なため、お腹が空いているとか、ふくれているとかの自覚がありません。目が覚めていて、抱かれていなくて、口に何も入っていなければ泣いてお母さんを呼ぶ、ようにできています。ただ、抱かれて吸い付きたいから泣くので、空腹であるとは限りません。赤ちゃんに慣れないうちは、泣き止ませたい一心で必要以上の授乳をしている家庭が大多数です。
食欲中枢が機能するようになるのが、生後2ヶ月を過ぎた頃からで、そこからは赤ちゃん自身がカロリーコントロールを始めます。これは本能に従って、非常に厳密なものです。大人のようにお腹一杯だけどケーキは食べようなんて、一切ありません。体が求める、必要なカロリー以上にも以下にも飲まなくなります。
お母さん方がよく気づかれるのは、あるときから急に大便の量が減ることです。そうなったら、もう余分には飲んでくれません。人工乳なら、瓶に余ったミルクが確認できますが、母乳は気付かれにくいものです。
お母さんがこの事を知っていて、飲まなくなった分の授乳を回数で減らせば、一回量はそのままになるので、問題は起きません。
授乳の回数が変わらないと、一回に飲む量を減らさなくてはならないので、赤ちゃんはなるべく飲まなくてすむような吸い方を工夫するようになります。
飲み始めはゴクゴク一生懸命だけれども、数分するとふぅ、という感じになり、首をふって浅く吸い付き直してチュクチュクしながらトロトロ眠ろうとしませんか?午前の9時とか10時とかの授乳では、最初から何だか真面目に飲まない感じがしませんか?吸っていた乳首をチュパッと離し、また吸い付き、チュパッとか、遊んでる感じの時はありませんか?吸っていて母乳がたくさん出始めると歯茎で噛んで止めようとしたりすることは?
赤ちゃんによって、時間帯などによって、やり方は色々ですが、これらをまとめて「遊び飲み」と呼びます。
遊び飲みは、実は「今はこれ以上飲みたくない」というサインです。空腹ではなく、今は要らないなら要らないと言ってくれれば良いのですが、赤ちゃんは抱かれて吸い付くのは大好きなので、そんなときでも差し出されればとりあえず貰ってしまうのです。でも、赤ちゃんの体は本能に従って必要以上に飲むことを拒否するので、沢山授乳するほどにひどい遊び飲みになってしまいます。
遊びのみが続くと、機械的な刺激によって、乳首には水疱や白斑と呼ばれる乳口炎、血豆、ひび割れ、赤み、腫れなどが起きて痛むようになります。また、白斑や、乳首の皮膚が傷つくことで乳輪下のリンパ節がしこりになって乳菅を圧迫し、通りが悪くなると母乳の流れが滞り、乳口が詰まってしこりが出来やすくなります。浅く吸うと乳房全体から母乳を吸い取ることが出来ず、赤ちゃんの頬の両側に当たる部分の母乳を飲み残します。このように乳腺の中に滞った母乳には細菌が繁殖しやすくなり、乳腺炎の原因になります。
実際、3~4ヶ月頃にしこりが出来たり乳腺炎になって母乳マッサージに掛かられる方の多くはこのケースです。また、離乳食が進んでたくさん食べるようになったときにも、必要なカロリーが減るので、授乳を減らさなければ同じようにトラブルを起こします。
遊び飲みに気が付いたら、思いきって授乳の回数を減らしてみてください。この時期からは夜間長く眠るようになるので、朝、午前遅く、午後、夕方、寝る前の5回がベースです。赤ちゃんの眠りの変化と夜間授乳については別記事で解説しています。空腹でないときの、例えば単に眠くてクチュクチュしたいときなど、「お食事」以外の授乳をなるべく廃して、一生懸命飲んでくれるときにだけ授乳しましょう。
一回の授乳も、ゴクゴクが過ぎてふぅ、となったら終わりで大丈夫。左右、2-3分程で充分です。
授乳を減らして遊びのみを無くし、物理的に加わる刺激が減れば、乳首の痛みは数日で無くなります。白斑、噛み傷、皮膚の亀裂が既に出来ている場合、その対処については、別記事をお読み下さい。