2019/12/13
授乳中、乳首に痛みがあって見てみると、乳首の先に白い斑点ができていることがあります。
これを乳口炎と言い、その見た目から白斑とも呼ばれています。
できる原因は赤ちゃんの吸い方にあります。「2カ月以降のトラブル」の記事に解説しましたが、赤ちゃんの「遊び飲み」によってできるものです。
赤ちゃんが吸っていた乳首をチュパッと急に離したり、吸いながら急に首を振ったりして乳首の先に強い陰圧がかかると、表面の皮が浮いて水疱ができます。そこにさらに陰圧が加わると水疱が破れて乳口周囲の粘膜にバイ菌が入り込み、炎症を起こします。これが乳口炎です。炎症を起こした粘膜の細胞が死んで血行が無くなることで白く見えるようになるので、「白斑」になるのです。
出来てからの数日間は、授乳の度にかなりの痛みがあります。この時期は炎症が乳口の奥へと広がっていると考えられます。痛みが無くなっても、乳口の粘膜が炎症により固く厚くなって出口が狭くなります。そのため普段より母乳が出にくくなるので、乳房に母乳が溜まり、痛みが出たり、細菌が入り込むと乳腺炎の原因になったりします。母乳の流れが普段と違うため、母乳の脂肪やタンパク質などの成分が出口で澱のようになり、固まりやすくなります。これによって乳口が完全に詰まってしまうと、乳房に大きなしこりが出来てしまいます。
痛みが無くなった頃からは、白斑は回復に向かっています。乳首の表面から乳口の奥に向かって、新陳代謝によって新しい細胞に置き換わることで治ります。この途中では、一見白斑が無くなったように見えていたのに、授乳の直後にはまた現れる、という現象が起きます。これは、表面は治ったけれども、乳口の奥はまだ治っておらず、授乳で白い部分が吸い出されて見えただけです。見た目には出来たり消えたりしているようですが、実はずっとそこに有るのです。白斑は急に治すことはできません。細胞の入れ替わりによって炎症の最も深いところまで治るには、数週間かかります。
白斑の治し方として、白斑を針などで掻き切って抗生剤の軟膏を塗り込むというやり方があるのですが、乳管を傷つけて塞がってしまったら大事で、さらに酷いことになりかねないので、私はお勧めしません。時間は掛かりますが、自然にゆっくり治るのを待つのが得策です。
乳口が元通りに開く間、どうしても母乳が溜まりやすくなりますから、乳腺炎になるのを防ぐために、張っている部分を保冷剤などで冷やしたり、赤ちゃんに飲ませるときに張っている部分を手のひらでジンワリと圧迫して出やすくしたりの工夫をしましょう。
また、完全に詰まらないよう、1-2回/日、乳首のオイル湿布をお勧めします。乳首の先に食用のサラッとしたオイル(オリーブ油やサラダ油など)を1-2滴つけ、ラップで覆ってブラジャーで固定し、10分くらい置きます。この間におむつ替えなどすると良いですね。その後授乳します。こうすると、乳口に溜まった澱が溶けて開通が良くなります。これは既に乳口が詰まってしまったときにも使えるテクニックです。
白斑はできるととても厄介なものですから、一度経験したら次を作らないことを考えましょう。
遊び飲みの考え方と対処については、「2ヶ月以降のおっぱいトラブル」の記事をご参照ください。